スペースXが象徴するAIバブル相場の⾏⽅「SaaSの死」は現実に | 株式会社ストラテジー・アドバイザーズ

コラム

スペースXが象徴するAIバブル相場の⾏⽅「SaaSの死」は現実に

2026年7⽉1⽇ 5:00

令和の資本論

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投資を通じて⾒える世界の政治・経済、コーポレートガバナンス(企業統治)など資本市場のあり⽅を有識者が寄稿。原則毎週⽔曜⽇に公開

スペースXの株式の新規公開は、⼈⼯知能(AI)バブル相場の象徴的な事象である。往々にして、株価はオーバーシュートする。AI産業⾃体はバブルではないが、やがて、AI相場はAIバブル相場に転化するであろう。

現在の相場は、2000年のITバブル相場をほうふつさせる。そこで、AIバブルとITバブルの類似点と相違点を整理し、今後の展開を予想する。

歴史上、世界はバブル発⽣とその崩壊を繰り返してきた。古くは、17世紀のオランダのチューリップバブル、18世紀の英国の南海バブル事件、1920年代の⽶国の「狂騒の20年代」、その後の⼤暴落があった。戦後は、1980年代の⽇本の資産バブル、1990年代のITバブル、2000年代の⽶国住宅バブルが代表的である。

1990年代のITバブルは、インターネット、パソコン、携帯電話といった新技術が急速に普及し、これらが株式相場をけん引した。特に、インターネットはこれまでのビジネスモデルを⼤きく転換させ、多くの急成⻑企業をつくり出した。それが、2000年をピークとするITバブルを⽣んだ。

2002年に、⽶連邦準備制度理事会元議⻑アラン・グリーンスパンは「バブルは崩壊して初めてバブルとわかる」という名⾔を残した。ITバブル崩壊後、多くの巨⼤IT企業が消滅した。ネットスケープ、ヤフー(ブランドは残る)、エンロン、ワールドコム、ルーセント・テクノロジーズ、サンマイクロシステムズはもはや存在しない。当時の時価総額上位企業で今なおトップクラスの企業はマイクロソフト、シスコ・システムズ、オラクルくらいしかない。

ただし、ITバブル崩壊を⽣き延び、その後急成⻑した企業も存在する。アマゾン・ドット・コムの1999年のピーク時の時価総額は5.8兆円(1ドル=160円で計算)であったが、ITバブル崩壊後の2001年に3465億円まで減少(94%減)した。創業来⾚字が続き、⿊字に転じたのは創業後9年後の03年のことであった。

しかし、26年度の予想純利益は15.4兆円、6⽉15⽇の時価総額は423兆円となった。ITバブル時の1998年創業のアルファベットは、2026年度予想純利益が27.6兆円、時価総額が714兆円となった。

同様の現象は、AIバブル相場でも起こるだろう。AI関連株の多くは急上昇しているが、10年たったら多くの企業が淘汰され、ごく⼀部の巨⼤企業のみが⽣き残ると予想される。

2022年に、オープンAIが世界初の⽣成AIであるChatGPTをリリースした。以降、AI半導体の世界シェア80%以上を持つエヌビディアを中⼼にAI関連株が⼤きく上昇した。AI企業は、データセンターなどの設備投資のために、巨額の資⾦調達を実施している。

2026年に株式発⾏により調達し資⾦は、オープンAIが19.5兆円、スペースXが13.8兆円、アルファベットが13.6兆円、アンソロピックが10.4兆円であ る。スペースXに続き、アンソロピック、オープンAIの⼤型新規株式公開が控えており、これらがAIバブル相場を加速する可能性がある。

スペースXの2025年度の売上⾼は3兆円、最終損失は7899億円である。衛星インターネットなど通信事業(売上⽐率61%)の営業⿊字は7077億円だが、宇宙事業(同22%)は営業⾚字1051億円、AI関連事業(同17%)は営業⾚字1兆円であった。2026年1〜3⽉期は、売上⾼7510億円に対して最終損失は6841億円であった。

今後も巨額の損失発⽣が予想され、ファンダメンタルズのみで時価総額400兆円強を正当化することは著しく困難である。しかし、イーロン・マスクのカリスマ性もあり、スペースXの株価がさらに上昇する可能性がある。

オープンAIの2025年度の最終損失は6.2兆円であり、今期も3兆円前後の損失が予想される。⼀⽅、アンソロピックは、今年4〜6⽉期は営業⿊字に転じる⾒込みである。

AIバブル相場では株価は極端な差がつくが、勝ち組は半導体である。データセンターはAI半導体やメモリを中⼼に半導体を⼤量の必要とする。半導体業界は、⻑期低迷により、多くの参⼊企業が淘汰され、上位寡占が進んだ。また、半導体の装置、材料、部材などの企業も数が減った。そこに需要が急拡⼤したため、多くの企業の利益が急増した。

主⼒のAI関連株は⼤きく上昇しているが、利益も⼤きく増加しているので割⾼感はない。たとえば、エヌビディアの時価総額は、2022年5⽉末の74.8兆円から今年5⽉末の817.5兆円と10.9倍になった。純利益は2022年1⽉期の 1.6兆円が、27年1⽉期の予想純利益(ファクトセット調べ)は34.9兆円と、22.4倍になった。

つまり、株価以上に利益が増加した。同様に、キオクシア・ホールディングスの今期予想純利益は5兆円であるので、PER(株価収益率)は8.7倍と割⾼感はない。

世界では、AI半導体開発・設計において圧倒的な世界シェアを持つエヌビディア、⽣成AIとAI半導体開発の両⽅に強いアルファベット、AI半導体製造において圧倒的な世界シェアを持つ台湾積体電路製造(TSMC)が、今後も相場の柱となろう。

⼀⽅、「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の死」は現実のものとなるだろう。IT⾰命によって、本屋やレコード屋はほとんどなくなり、それらの収益がアマゾンや楽天などに移転した。同様に、ITサービス企業の収益が、⽣成AI、半導体、データセンターの関連企業に移転することであろう。ホテルやレストランの予約サイトなどは、今後、AIエージェントによって⾃動化されるだろう。

世界のテクノロジー株は⼤きく上昇しているが、年初来⾼値からその後の安値までのSaaS企業の株価下落率は、セールスフォース43.6%、アドビ 42.5%、アクセンチュア56.7%(いずれも6/22が安値、終値ベース)である。同様に、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズの株価は下落している。

⽶国同様、⽇本のテクノロジー企業の中でも、株価の格差が拡⼤してい る。AIバブル相場の勝者はごくわずかであり、過度な期待が剝落し、株価が急落する企業が続出する可能性がある。データセンター関連株として期待されたフジクラは今年5⽉⾼値から6⽉安値まで最⼤47.3%下落、古河電⼯は5⽉⾼値から6⽉安値まで32.2%下落である(その後急反発した)。

結論として、⽇本の半導体関連企業は世界的に⾒ても有望である。キオクシアも素晴らしいが、世界シェアが⾼く、メモリに依存していないという点では、東京エレクトロンアドバンテスト信越化学⼯業、レゾナッ ク・ホールディングスの成⻑性と安定性に注⽬したい。

藤⽥勉(ふじた・つとむ)   元シティグループ証券副会⻑。ファンドマネジャー、ストラテジストとして約30年の経験を持つ。2010年まで⽇本株ストラテジストランキング5年連続1位。⼀橋⼤学⼤学院経営管理研究科客員教授などを経て2022年6⽉から現職。

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