
2026年9⽉2⽇ 5:00
令和の資本論

令和の資本論
投資を通じて⾒える世界の政治・経済、コーポレートガバナンス(企業統治)など資本市場のあり⽅を有識者が寄稿。原則毎週⽔曜⽇に公開
株価が低迷しているようなイメージがあるものの、株式市場の上昇基調には変化はない。日経平均は今年6月に高値を付けその後最大で15.1%下落した(年初来27.9%上昇)。一方、時価総額加重平均で、市場をより的確に表す東証株価指数(TOPIX)は8月に史上最高値を更新した。
世界の人工知能(AI)革命の長期成長トレンドは不変である。AIの頭脳に相当するデータセンターの世界の市場規模は、2026年の約90兆円から31年には約210兆円に拡大する見通しである(1ドル160円で換算、出所:マーケッツアンドマーケッツ) 。多くの日本のデータセンター関連企業は国際競争力が高く、その恩恵は大きい。そこで、以下、世界のAI革命を展望しつつ、投資戦略を検討する。
データセンターは、ハイパースケーラーとコロケーションに大別される。前者は自社で使用することが多く、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトが大手である。
後者は他社に貸し出す用途が多く、不動産投資信託(REIT)のエクイニクス、デジタル・リアルティ・トラストなどが代表的である。データセンターの用途として、AIとクラウドサービスがあり、この両方が大きく成長している。
対話型AIの市場は激戦である。26年5月の世界の市場シェアは、1位はオープンAIのChat GPTがシェア53.9%、2位グーグル(アルファベット)のジェミニ27.9%、3位アンソロピックのクロード9.2%である(出所:Similarweb)。
市場シェアは激変している。Chat GPTのシェアは、1年前の79.0%から25.1ポイント低下しており、逆にジェミニは市場シェアを20.3ポイント、クロードは7.8ポイント高めている。オープンAIの純利益は前期6兆円の赤字であり、純利益が前期21兆円、今期予想40兆円のアルファベットに対抗するのは容易でない。成長力が最も高いのがクロードであり、多くのパフォーマンス指数では最高の評価を得ている。
一方で、低価格で攻勢をかけるディープシークは、シェアを2.1ポイント落とし、グロックやコパイロットも伸び悩んでいる。上位3社の合計シェアは88%から91%に上昇した。
クラウドサービスでは、世界1位がAWS(アマゾン)、2位マイクロソフト、3位グーグルである。世界の市場は、26年の約200兆円から32年には約740兆円に拡大する見通しである(出所:360iResearch) 。
26年度の設備投資金額(ファクトセット予想)は、アマゾンが21兆円から35兆円(前年比66%増)、マイクロソフトが19兆円から32兆円(70%増)、アルファベットが15兆円から32兆円(120%増)、メタが11兆円から22兆円(97%増)と、4社合計で65兆円から121兆円(84%増)の見込みである。
今年の株式発行による調達額は、OpenAI 20兆円、アルファベット14兆円、スペースX14兆円、アンソロピック10兆円と巨額である。ブラックストーンなどのプライベートエクイティファンドやブラックロックなどの資産運用会社が資金供給をするようになりつつある。今後外部調達が増えることによって、資金の問題は大きなネックとはなるまい。
アルファベットの強みは、総合的な経営力である。Gメール、ブラウザー(Chrome)、移動体通信基本ソフト(Android)、検索エンジン、画像配信(YouTube)など情報インフラにおいて、世界シェアはトップである。
これらと連携し、ジェミニの市場シェアも大きく上昇している。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が25年安値から26年高値まで4.1倍になった(終値ベース、以下同)。今年6月の高値から7月末まで22.7%下落したが、今後、好調なファンダメンタルズを反映し、反発に向かうだろう。

日本の半導体企業で注目されるのは、キオクシアホールディングス(285A)である。キオクシアはNAND型フラッシュメモリで世界3位であり、データセンター向け売上高が全体の40%以上を占める。一時、その時価総額は日本最大になったが、今年6月の高値から7月末まで57.2%下落した。8月14日時点で今期ファクトセット予想ベースの株価収益率(PER)は5.2倍と、TOPIXの17.1倍と比較して著しく低い。
今年4〜6月期の純利益は8422億円となり、8000億円の自社株買いを実施した。自己資本比率は3月末の38%から6月末に51%に急上昇した。今後も巨額の利益が見込まれるため、設備投資と株主還元の増加が予想される。
半導体部品・材料では、半導体パッケージ材料に強いレゾナック・ホールディングス(4004)が注目される。昭和電工が日立化成を買収し、その後、石油化学部門をスピンオフすることとした。26年1〜6月期のコア営業利益の86%が半導体・電子材料部門によるものである。
総合化学メーカーから、世界トップのシェアを持つ半導体パッケージ関連企業に変身しつつある。株価は今年5月の高値から7月の安値まで37.7%下落したが、株式市場が経営力を過小評価しているように見える。
電子部品では、積層セラミックコンデンサー(MLCC)で世界1位のシェアを持つ村田製作所(6981)が注目される。データセンター向けの売上高は、25年度1767億円から26年度には3706億円と2倍以上になる見通しである。

AI用半導体は動作時に電力が大きく変動するため、MLCCが電力を制御して、その稼働を安定させる。今年6月の高値から7月の安値まで49.1%下落しており、過度な下落に見える。今年秋以降、上記3銘柄を含むAI関連株が日本株の上昇をけん引することが期待される。
藤⽥勉(ふじた・つとむ) 元シティグループ証券副会⻑(現:株式会社ストラテジー・アドバイザーズ 代表取締役社長)。ファンドマネジャー、ストラテジストとして約30年の経験を持つ。2010年まで⽇本株ストラテジストランキング5年連続1位。⼀橋⼤学⼤学院経営管理研究科客員教授などを経て2022年6⽉から現職。
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