
2026年11⽉4⽇ 5:00
令和の資本論

令和の資本論
投資を通じて⾒える世界の政治・経済、コーポレートガバナンス(企業統治)など資本市場のあり⽅を有識者が寄稿。原則毎週⽔曜⽇に公開
高市早苗内閣は、2025年10月21日に発足し、政権誕生から1年を経過した。歴史的に見ても、内閣支持率は高く、長期政権化する可能性が見えてきた。歴代長期政権は、多くの場合株価が大きく上昇している。高市政権発足後の1年間で東証株価指数(TOPIX)は24.5%上昇した。そこで、今後の高市政権の展望と、日本株の長期上昇の持続性について検討する。
高市政権は、長期化する可能性が十分ある。その理由の第一は、高支持率である。日本経済新聞社の9月の世論調査では、高市内閣の支持率は62%、令和の資本論不支持率は33%である。発足時には74%であったので、多少低下しているが、依然として高水準である。
ちなみに、第2次安倍晋三政権は12年発足時の62%から1年後に56%、小泉純一郎政権は01年の80%から11カ月で48%に低下した。現在の自民党支持率は41%であるので、内閣支持率から自民党支持率を差し引いた「首相プレミアム」は21ポイントもあり、首相の個人的人気が高いことを示している。
第二に、野党が弱体化していることである。自民党、維新の会合計の与党の議席数は衆議院で465議席中351議席と圧倒的である。参議院では、与党は247議席(欠員1)中120議席だが、支持基盤が近い参政党(15議席)やチームみらい(2議席)、日本保守党(2議席)を合わせると、139議席となる。
最大野党である中道改革連合が解体したため、やがて公明党の協力も期待できよう。仮に、現在の高い内閣支持率が続けば、28年に予定される参議院選挙で自民党が議席を大幅に増やす可能性がある。
第三に、自民党内で強力なライバルが存在しないことである。27年9月には自民党総裁選挙が実施される。25年の総裁選では、1位高市早苗 183票(決選投票185票)、2位小泉進次郎164票(同156票)、3位林芳正134票、4位小林鷹之59票、5位茂木敏充49票であった。
これらのうち、林元総務大臣が立候補する可能性が高いが、他の4人は閣僚と党役員であるため立候補しないと見られる。このため、高市総裁が総裁選で再選される可能性は高い。
自民党総裁の任期は3年であり、最大3期まで連続して務めることができる。現在の総裁任期は前任者(石破茂)の残任期である27年9月末までである。この残任期の期間は、党則上の「連続3期」に含まれない。よって、高市政権の最大の任期は36年までの11年間である。
過去の長期政権では、多くの場合、好況が続き、株価が大きく上昇した。一方、好況、株高時に、政権が長期化するとは限らない。1980年代後半のバブル時の竹下登内閣、宇野宗佑内閣はいずれも短命であった。
小泉内閣の株価上昇率は15.5%と低いように見えるが、これは政権発足時に金融危機が発生したためである。その後、金融危機を解決し、05年の郵政解散選挙で自民党は圧勝した。その結果、03年安値から07年高値まで日本株は2.4倍に上昇した。

高市首相は、師と仰ぐ安倍の政策を重視している。ただし、経済政策においては違いもある。安倍政権では、「異次元の金融緩和」によるリフレ政策を重視していた。一方、2度の消費税率引き上げ(5%→10%)を実施し、財政規律に対して十分配慮した。
高市政権は、「責任ある積極財政」を掲げ、戦略17分野を中心とする財政支出拡大を積極化している。党の中枢に萩生田光一元経済産業大臣(自民党幹事長代行)、首相筆頭政務秘書官に経済産業省元事務次官を配置し、経済産業政策を重視した政策を実施している。
特に、重視しているのが、人工知能(AI)、半導体、サイバーセキュリティなどのテクノロジー分野と 資源・エネルギー安全保障分野である。株価の観点から、これらが注目される。
年初来の日本の時価総額増加額上位10社のほとんどが、テクノロジー企業とメガバンクである。メガバンクは3社しかないが、時価総額が大きいため、時価総額加重平均であるTOPIXを押し上げる。
日本は、半導体製造装置、材料、部材、電子部品、電線に強みがあり、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、ディスコ(6146)、信越化学工業(4063)、レゾナック・ホールディングス(4004)、村田製作所(6981)、イビデン(4062)、JX金属(5016)、フジクラ(5803)、古河電気工業(5801)などは、いずれも主力分野では世界1位か2位である。
一時期、日本で時価総額が1位になったキオクシアホールディングス(285A)は、NANDメモリにおいて世界シェア3位である。
円安はインフレ率を高め、日銀利上げ要因となる。利上げは銀行の利ザヤ拡大を通じて、利益を増加させる。さらに、メガバンクは海外金融機関を積極的に買収してきた。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は、海外事業に強かった東京銀行を経営統合し、さらに、世界最大の証券会社であるモルガン・スタンレーに24%出資しているため、円安の恩恵を大きく受ける。

日本株は大幅に上昇したものの、依然としてPBR(株価純資産倍率)は1.8倍と、米国の4.9倍をはるかに下回る。さらに、日本経済の環境はおおむね順調であり、円安傾向も続き、日銀利上げが続くと予想される。経済産業政策を重視する高市政権の基盤は一段と強化されるであろう。これらを総合すると、AI革命とバリュー(割安株)相場という投資テーマは長続きし、日本株上昇が長期化する可能性がある。
藤⽥勉(ふじた・つとむ) 元シティグループ証券副会⻑(現:株式会社ストラテジー・アドバイザーズ 代表取締役社長)。ファンドマネジャー、ストラテジストとして約30年の経験を持つ。2010年まで⽇本株ストラテジストランキング5年連続1位。⼀橋⼤学⼤学院経営管理研究科客員教授などを経て2022年6⽉から現職。
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